langstat diary

生存報告と備忘録

この世の果て

 コロナ禍以降、ウェブ配信で昔のドラマを観る機会が増えた。特に、1990年代の野島伸司のドラマをよく観ている。野島作品は、当時の流行や社会問題を積極的に取り入れている点で、1990年代の「雰囲気」が色濃い。とはいえ、リアルタイムでは、『高校教師』(1993年)、『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(1994年)、『リップスティック』(1999年)くらいしか観ていない*1。その後も、勝手に「ポスドクもの」に分類している『高校教師』を何度か観ている程度*2。それから月日が流れ、ステイホーム中に暇だったので(笑)、『101回目のプロポーズ』(1991年)、『愛という名のもとに』(1992年)、『ひとつ屋根の下』(1993年)などを初めて観た。昔も今も(よほど暇でない限り)絶対に観そうにないストーリーだけど、主に昔の東京の風景を観たくて*3
 そして、今回は、『この世の果て』(1994年)を観た。リアルタイムでもストーリーに興味を持っていて、主演の三上博史も好きだったのだけど、なぜか観ていなかった*4

都会の絶望の果てで出会った、孤独なホステス・砂田まりあ(鈴木保奈美)と孤独な天才ピアニスト・高村士郎(三上博史)の究極の愛を描いた悲劇。オープニングとエンディングは士郎がまりあに語りかける形でナレーションが入る。メインキャスト全員が孤独であり、悲しい過去、心の傷をかかえており、この枠としては珍しい重厚な人間ドラマが描かれている。
 
鈴木保奈美横山めぐみの初の汚れ役であり、その暗い演技が放送当時話題になった。野島作品の中でも特に暗い作品と言われている。同年10月21日に、ビデオ全4巻が発売されたが、DVD化は実現していない。(引用元

 結論から先に書くと、『この世の果て』は、非常によかった。野島作品には類型論的というか、記号的なキャラクターが多く出てくるが、30年経った今となっては、それも懐かしい*5。ここに詳細な感想を書く気はない(横着) 印象に残ったシーンを2つだけメモするにとどめる。
 なな(桜井幸子)は、姉のまりあ(鈴木保奈美)に以下の心理テストを教える。あの頃たしかに、心理テストが流行っていた*6『それいけ!!ココロジー』とか(笑)

なな 地球が滅びてね、一艘の船があります。つまりノアの箱舟だね。その船に自分ともうひとりだけ連れてっていいのね。次の動物から選びなさい。馬、孔雀、虎、羊。心理テストなの。自分が何を一番大事にしているか、何を求めているか。馬はね、仕事。孔雀はお金だって。虎はプライド。羊は愛情だよ。男の人の場合はね、羊って答えた人だけが女の子を幸せにしてくれるんだって。

 それはそうと、その心理テストをまりあに出されたときの士郎(三上博史)の反応が以下。そんなん、惚れてまうやろ。。。だって、三上博史があの表情で、あの目つきで言うのよ(笑)

士郎 世界が滅んだら、きっと僕は、船に乗らない。

 もう一つ印象に残ったのは、まりあの母親である夕子(吉行和子)の遺言。元夫を追って自殺したという文脈はさておき、「人間はある期間を過ぎたら、後はどうでもいい時間なのさ」という言葉が味わい深い。

夕子 あたしはこの人の後を追って行くつもりだよ。きっとまりあ、おまえには分からないだろうけど、人間はある期間を過ぎたら、後はどうでもいい時間なのさ。それに、この人は駄目なんだから、ひとりじゃあの世だって生きちゃいけないだろうから。

 その他、詳述しないけど、豊川悦司大浦龍宇一秋本奈緒美横山めぐみ小木茂光、松田勝。。。みんなよかった。あの頃のドラマ特有の暗さは、ワタクシのような日陰者の大好物*7。昔の映画やドラマを観ると、いまだに21世紀の価値観に順応できていないことを再確認する(やばい)
 また、つまらぬものを書いてしまった*8

*1:ただし、今回言及する『この世の果て』は、ドラマの数年後に幻冬舎文庫(1997年)で読んでいる。昔の幻冬舎文庫はよかった。井上晴美が坊主になっていた頃(笑) 『真剣師小池重明』(1997年)とか、初期の幻冬舎アウトロー文庫もたくさん読んだ。

*2:他の「ポスドクもの」としては、松雪泰子主演の『Mother』(2010年)がある。そんなラベリングをしたら、いろんな方向から怒られそうだけど(苦笑)

*3:101回目のプロポーズ』の浅野温子がふいに見せる表情が意外とよかった。ワタクシにとって、浅野温子は、『あぶない刑事』シリーズ(1986年〜2016年)の真山薫のような馬鹿キャラか、『沙粧妙子ー最後の事件』シリーズ(1995〜1997年)の沙粧妙子のような病的キャラなのだけど(どちらも大好き)、『101回目のプロポーズ』では、妙子っぽいアンニュイな表情をしばしば見せてくれた。

*4:ワタクシは、1990年代の真田広之三上博史豊川悦司などが好き過ぎる。同時代の女性アイドルなどよりも遥かに好き。

*5:野島伸司は、『高校教師』制作時に「ギリシャ神話やシェイクスピアの劇のような作品を作りたい」と言ったらしい。もしかすると、類型論的な人物造形も、ある程度は意図的なものなのかもしれない。因みに、野島伸司は1963年生まれ(!)で、ヒットを連発した1990年代前半は30歳前後。その年齢で書いたと思うと、テイストの好き嫌いはあるにせよ、間違いなく天才よね。

*6:『羊たちの沈黙』(1991年)のような異常心理ものも流行ったし、心理学らしきものに関心が集まっていた時代。ビリー・ミリガンなどの影響なのか、『フェイス』(1997年)のような多重人格ものも流行った。

*7:『もう誰も愛さない』 (1991年)とか、最高じゃない? その手のジェットコースタードラマ(死語)でなければ、豊川悦司主演の『青い鳥』(1997年)なども好き。

*8:日記的なものを書きたい気持ちはあるのだけど、週6で朝から晩まで拘束されていると、ネガティブなことしか書けそうになくて。。。